2025.4.29更新
博多にある「泊まるほど人も星も喜ぶ」HOTEL GREAT MORNINGのマネージャー、徳英さん(30代)。
2023年からは、リブランディングやバイヤー担当として、再びアニーにも関わりはじめました。
徳英さんが、社会人として最初に歩みを始めた場所も、実はこのアニーでした。
少しうっかりしているところもあるけれど、その分だけ人の心の陰影に敏感で、豊かな想像力をもって小さな風景をすくい取る人です。
そんな徳英さんに、母の日を前に「お母様との思い出」について語っていただきました。
ーお母様との想い出を聞かせてもらえますか
ー共働きだった母が、忙しい仕事と家事を終えた後、寝つきの悪い私たち兄弟のために読んでくれていた『ハリー・ポッター』。
目を閉じながら耳をすませ、本の世界に身を委ねるうちに、私の中では物語の主人公たちが、のちに映画館で見る映像とは全く違う姿で動いていたのを今でも覚えています。
当時はわがままばかりで、読み聞かせをせがんでおきながら、気づけば母の声を子守唄に眠ってしまう。
そんな夜が、何度も何度もありました。
いま思えば、あの時間こそが私の感受性の原点であり、「見えないものを思い描く力」を与えてくれた、母の静かな贈りものだったように感じています。
ー素敵な想い出ですね。お母様に、あらためて感謝を伝えた記憶はありますか。
ーそう言われるとドキッとしますね。実は母と同じ地域に暮らしていて、仕事でも関わることが多いのですが、普段から頻繁に仕事以外で電話やメッセージのやり取りをするわけではありません。感謝の気持ちを、あえて言葉にしたことも…中々できていません。なんだか少し照れくさくて、自分から何かを贈ったり、感謝を口にしたりするのは、正直あまり得意ではないんです。
でも、不思議ですね。年を重ねて、自分にも家族ができて、日々の暮らしの中でふと感じるようになったんです。
「自分を大切にできない人は、家族も大切にできない」って。
心から自分を大事にしようとすると、自然と両親への感謝にたどり着く。
言わなくても伝わっているはず…そんなふうに思っていたけれど、やっぱり“言葉”や“形”にしてこそ、届くものってあるんですよね。
それに気づいた今は、少しずつでも、その気持ちを伝えていけたらと思っていて今年の母の日にこそ。と思っています。
ーそうなんですね。そんな特別な贈り物には何を選ぶ予定ですか。
ー時を経て大人になった私は、相変わらず物忘れの多い性分で、傘を置いて帰ってしまうこともしばしば。
そんな私に、ある日友人が贈ってくれた傘があります。
竹製の取っ手がごつごつと手に馴染み、職人の息づかいが感じられるような一本。柄もあって素敵なんです。
不思議なことに、その傘は一度も忘れたことがありません。
丁寧に作られたものには、使う人の心を変える力がある—
この傘は、雨の日さえも外出するのを嬉しく感じさせてくれるように。
だから今年の母の日、私は母に傘を贈ろうと思います。
たくさんの雨の日も、忙しい毎日も、私たち家族の中心で在り続けてくれた母へ。
静かだけれど、確かな感謝の気持ちを込めて。
それは、ただの贈りものではなく、
私の「ありがとう」をそっと託した、心からの手紙のようなものです。